【神経生物学】 [生物科学科 3群 A選択 科目(配当年次: 第3学年 ) ]
 
単  位:2単位 単位認定者: 寺島俊雄
授業期間: 後期  15コマ 科目分担者:
授業形態: 講義  週1コマ
 
教育目標

「神経生物学」では、哺乳類の脳や脊髄の構造と神経ネットワークの学習を通じて、運動・感覚・高次脳機能(記憶、情動など)がどのような仕組みで制御されているかを知り、さらにその破綻により生じる病態について理解できることを目標とする。

教育内容

哺乳類の神経系の理解には、まずその構成素子のニューロンとグリアについて知らなければならない。さらに複雑な脳の構造の理解には、神経管の分化やコンパートメントについての知識が必須である。このような神経組織学や神経発生学の基本的な知識を学んだ上に、脊髄から順に大脳皮質まで中枢神経系の構造を下位から上位に向かって学習する。最後に運動と感覚の神経回路網を学び、統合的に神経系を理解する。

教育方法

毎回、出席の確認を兼ねて簡単な小テストを行う。

 
講義内容(シラバス)
項  目 担当者 授業内容

1回

神経組織学:ニューロンとグリア

寺島

神経系の区分(中枢神経系と末梢神経系)について学ぶ。ニューロンとグリア(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、上衣細胞)について学ぶ。

2回

神経系の発生・変性・再生

寺島

外胚葉から神経管と神経堤が生じ、前者から脳と脊髄、後者から末梢神経系ができる。神経の軸索が損傷を受けると変性するが、変性を免れると再生する。

3回

脊髄:神経系のプロトタイプ

寺島

神経管の境界溝より腹側を基板といい、その背側を翼板という。基板は遠心性(運動)ニューロンとなり、翼板は求心性(感覚)ニューロンとなる。

4回

脳幹(延髄・橋・中脳)の構造と機能

寺島

延髄・橋・中脳をまとめて脳幹と云う。脳幹の中心構造を脳幹網様体といい、上行性網様体賦活系が起こる。ここにさまざまな自律神経系の中枢が存在する。

5回

小脳と運動調節

寺島

感覚の積分中枢である小脳は、苔状線維と登上線維の二つの主要な入力を受け、中脳の赤核、視床の外側腹側核等に出力し、運動を調節する。

6回

間脳(視床と視床下部):感覚・運動情報の中継と本能

寺島

間脳は腹側の視床下部、背側の視床に分かれる。視床下部は自律神経系と内分泌系の最上位を占める部位であり、視床は運動情報や感覚情報を中継する。

7回

大脳基底核と運動調節

寺島

線条体(被殻と尾状核)、淡蒼球、視床下核、中脳黒質を大脳基底核という。大脳基底核は、運動野と結合し、運動の調節を行う。

8回

大脳新皮質と高次脳機能

寺島

大脳皮質は、6層構造をもつ等皮質と6層構造をもたない不等皮質に分けられる。等皮質は発生的に新しく新皮質という。不等皮質は古く、原皮質と古皮質からなる。

9回

嗅脳と大脳辺縁系:記憶と情動

寺島

嗅覚の一次情報を受け取る領域を嗅脳という。側脳室の周囲に押し込まれた古い皮質を辺縁系といい、嗅脳からの入力を受ける。

10回

運動系の神経回路

寺島

皮質脊髄路(錐体路)は大脳皮質運動野から起こり、反対側の脊髄前角運動ニューロンに終止する代表的な脊髄下行路で運動指令を伝える。

11回

感覚系の神経回路

寺島

四肢の体性感覚は後索内側毛帯系や脊髄毛帯系を介して反対側の視床後外側腹側核VPLに中継され、最終的に頭頂葉の体性感覚野に至る。

12回

大脳新皮質の発生

寺島

大脳皮質ニューロンはプレプレート内に進入し、これを上半の辺縁帯(カハール・レチウスニューロン)と下半のサブプレートに分離し、自身は皮質板となる。

13回

神経回路の発生

寺島

神経回路形成は経路形成と終末形成からなる。前者は成長円錐が正しい経路を選択する過程であり、後者は成長円錐が正しい標的を認識する過程である。

14回

神経研究法(附録:ミュータントマウスの古文書解読)

寺島

伝導路研究法、免疫組織化学法、in situ hybridization法など基本的な神経研究法の講義に加えて、変わりネズミの飼育法に関する江戸時代の古文書を解読する。

15回

まとめ

寺島

全体の確認と復習

 
到達目標

哺乳類の神経系の構造とその神経ネットワークを理解することにより、現在問題となっている脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症など神経系の疾患の病態のメカニズムを理解する基礎を作る。

評価基準

定期試験を行いその得点で合否を判定する。ただし講義に際して、毎回、小テスト(2点満点)を行い、その点数も定期試験の得点に加点する。

準備学習
(予習・復習)

特に予習は必要としないが、教科書を読んで復習することにより、さらに知識を深めてほしい。

その他

神経系の学習が難しいのは、その用語が耳慣れないことが原因である。特に脳の形態に関する用語は難解なものが多く、神経系の学習を遠ざける原因となっている。本科目ではその最初の壁となる用語の敷居を低くしたい。

 
  (書  名) (著者名) (出版社名) (定価)
教科書 神経解剖学講義ノート 寺島俊雄著 金芳堂 4600円+税
参考書 脳とニューロンの生理学 小島比呂志編集 丸善出版 5600円+税
みる見るわかる脳・神経科学入門講座 改訂版(前編) 渡辺雅彦著 羊土社 3600円+税
改訂第3版 脳神経科学イラストレイテッド 真鍋俊也編集 羊土社 7218円