【分子分光学】
(Spectroscopy for Molecular Science)
 
単  位:2単位 単位認定者: 松沢英世
授業時期: 前期 15コマ 科目分担者:
授業形態: 講義 週1コマ
 
授業の目的

分子分光学は、自然界にある多様な物質の構造や性質を物理化学的視点から解き明かすための重要な方法の一つである。この講義では、原子と分子の電子構造をより詳細に議論するための量子力学を学び、その後、原子や分子と光(電磁波)との相互作用を理解し、具体的な分子分光学について学ぶ。

教育内容

分子分光学の対象となる原子・分子の電子構造について、学部レベルの知識の復習とより進んだ内容の講義を行う。原子や分子の電子構造(波動関数とエネルギー)はどのように決定されるのかを説明する。分子の基底,励起状態を記述する手段としての分子軌道理論の基礎を説明する。次に分子の対称性について学び、分子分光学との関わりについて説明する。その後、光と分子の相互作用を量子論的に説明し、観測されるスペクトル形状関数について学ぶ。最後に具体的な分光学として、振動分光学、電子スペクトル、円二色性、磁気円二色性、磁気共鳴(NMR, ESR)分光学をとりあげ、これら分光学的測定からどのような情報が得られるのかについて、量子力学的な視点から説明する。

教育方法

配布プリントに沿ってパワーポイントを使った解説を行い、理解を深めるための演習問題をレポート課題にする。翌週、レポートの解答の解説をプリント配布とパワーポイントによって行い理解の確認を行う。

 
講義内容(シラバス)
項  目 担当者 授業内容

1回

授業概要の説明と基礎知識の確認

松沢

授業概要の説明の後、学部レベルの量子力学(化学)の基礎事項を確認する。

2回

原子の電子構造(1) 反対称化波動関数

松沢

フェルミオンとしての電子,ハートリー近似と軌道関数,スピン関数,反対称化波動関数とスレーター行列式について学ぶ。

3回

原子の電子構造(2)項状態の波動関数とエネルギー

松沢

昇降演算子の働きと角運動量の合成について学び、項状態の波動関数を導く。エネルギーをCondon-Shortleyパラメータで表わす。

4回

分子の電子構造(1)VB法とMO法

松沢

水素分子のエネルギーを原子価結合(VB)法と分子軌道(MO)法に基づいて評価する。

5回

分子の電子構造(2)Hartree-Fock法

松沢

電子間相互作用とHartree-Fock法,SCF,CI法などをはじめ、発展した軌道理論について概略を学ぶ。

6回

分子の電子構造(3) 電子相関とDFT法

松沢

交換相関ポテンシャル項の導入と電子密度汎関数法(DFT)についてその概略を学ぶ。基底関数の表し方について説明を加える。

7回

分子の対称性と点群

松沢

分子の対称性を調べ「点群」へ帰属する方法を学ぶ。点群の指標表,既約表現とその見方について学ぶ。応用例として振動分光法を取り上げる。

8回

分子の対称性と分子軌道

松沢

分子軌道の対称性について学ぶ。射影演算子を用いた「対称化軌道」の生成方法を学び、光遷移の選択則を分子の対称性から理解する。

9回

環状π共役分子の電子的励起状態

松沢

環状π共役分子のperimeterモデルと励起状態の古典的表記法とその特徴について説明する。

10回

光遷移の遷移確率

松沢

時間依存シュレディンガー方程式と遷移確率について学ぶ。FermiのGolden則、振動子強度などについて学ぶ。

11回

光遷移の形状関数とスペクトル線幅

松沢

スペクトル形状関数と吸収線幅について説明する。

12回

吸収,蛍光スペクトルの溶媒効果

松沢

溶媒の誘電率と屈折率の関与とスペクトルのシフト、Onsagerの反動電場について説明する。

13回

円二色性(CD)と磁気円二色性(MCD)

松沢

旋光強度から見積もられるCD、軌道角運動量とMCDについて実例を挙げて概説する。

14回

磁気共鳴(NMR,ESR)分光法

松沢

核磁気共鳴(NMR)のスピン-スピン結合と電子スピン共鳴(ESR)の超微細構造について学ぶ。

15回

まとめ

松沢

講義で学んだ内容を総括する。

 
到達目標

分子分光学の基礎として、原子・分子の電子構造についてのより進んだ内容の量子力学的知識を身につける。分子の対称性を点群を使って理解し、分子分光学に適用できる。光と分子の相互作用とスペクトル形状関数について理解し、具体的な分子分光学として、振動分光学、電子スペクトル、円二色性、磁気円二色性、磁気共鳴(NMR,ESR)分光法の基礎を身につける。学生諸君の具体的な到達目標は、毎回課されるレポート課題の意図(背景)を十分に理解した上で、個々の問題を自力で解けるようになることである。

評価基準

評価はレポートで判定する。授業への積極的な参加は加点対象とする。なお、欠席は減点する。

準備学習
(予習・復習)

学習内容の理解を深めるために、ほぼ毎回、レポート課題を出すので、可能な限り自力で解いてみて欲しい(解き方の説明も行います)。翌週、解答のプリントを配布して解説を行う。

その他

分子分光学の基礎である光と分子の相互作用を量子理論を通して理解するためには、量子力学で登場する数学に慣れ親しむことが重要である。教科書や配布プリント(レポートの解答解説)には、数式の誘導をできるだけ詳細に記載してあるので十分役立てて欲しい。レポート課題を毎回きちんと提出することで理解が深まるので、積極的な取り組みを望む。数学も含め解らないところがあったら積極的に質問して欲しい。

 
  (書  名) (著者名) (出版社名) (定価)
教科書 資料を配布する
参考書 Molecular Quantum Mechanics 5th. edition 2011年 P. Atkins, R. Friedman Oxford Univ. Press 8,211円(税込)
Molecular Spectroscopy 2nd. edition 2017年 J. L. McHale CRC Press 12,249円(税込)